単行本「杉山清貴&オメガトライブ35年の真実」(2018/8/20発売)を読むまでは、誤解していました。
1985年解散時には、裏事情も全く知らず、不仲かギャラの問題だろうと勝手に想像していたのです。
あんなに売れていたのに、人気絶頂でこれからもっともっと売れるだろうという時に、なぜ?
と疑問に感じた人も多かったと思うのです。読後に、やっと知りたかったことの一部分を知ることができました。
今だからこそ言えた!音楽業界を取り巻く環境や、多くの人の思惑などが入り乱れていたのですね。
杉山さんの「自由に歌えない」「やりたいようにできない」フラストレーション。
そして、バンド演奏は「スタジオミュージシャンによるレコーディングだった」という屈辱。
本の中では、音楽の技術的な話や楽曲に関わった人々のそれぞれの思いや背景。
ファンの間では有名な話だとしても、世間一般の人には知られていません。
杉山さんからカルロスに代わった、杉山さんが脱退したと思っている人が数多くいると思います。
「杉山清貴&オメガトライブ35年の真実」(2018/8/20発売)を読むと、その常識が覆ります。
杉山清貴&オメガトライブの成功
杉山清貴&オメガトライブは、ザ・ベストテン、歌のトップテンなどの常連で、夜のヒットスタジオなどでもよく出演されていました。2年8ヶ月という短い活動期間にもかかわらず、ヒット曲を連発し大活躍されていました。
(その頃、なぜか私はあまり注目していませんでした。)
そして、オメガトライブがいつの間にか、カルロス・トシキさんがボーカルになっていたのです。
内情も芸能ニュースも何も知りませんでした。
世間の皆さんも同じような感じだったと思います。
ある日突然杉山さんではなくなって、カルロス・トシキさんがボーカルになっていたのです。
よくあるバンド内の不仲?ボーカルが独り立ち?円満だったのかしら?
とその時はあまり気に留めずにいて、月日が流れました。
その後、ソロになった杉山清貴さんもヒット曲を連発していました。
さよならのオーション、最後のHoly Night、水の中のanswerなどが大ヒットしていましたね。
杉山さんの魅力もさることながら、やはり杉山清貴&オメガトライブの時の幻影を求めているファンが多かったということだと思います。
当時の杉山清貴さんは、それを認めたくなかったかもしれませんが・・・・
それだけ杉山清貴&オメガトライブというプロジェクトは大成功を収めたのだと思います。
藤田社長のワンマン
当時オメガサウンドのコアであった作・編曲家の林哲司さんののインタビューの中で、“故 藤田浩一社長のエピソードが、克に記されています。
藤田浩一さんは、エグゼクティブプロデューサーであり、トライアングルプロダクションの社長で
“オメガトライブ・プロジェクト”の中心人物だった方です。
彼がオメガトライブを生み出したといっても過言ではあありません。
そこで出てくる重要なキーパーソンは、何と角松敏生さんなのです。
角松敏生さん
角松さんを見出して、デビューさせたのがこの藤田社長なのです
角松さんもデビュー当時は、トライアングルプロダクションに所属しました。
藤田社長との方向性の食い違いから、他の事務所に移籍してしまうのです。
そして、ちょうど角松敏生さんのあとに入る形で入ったのが、杉山清貴さんだったそうです。
若さゆえ
藤田社長には、作りたい音楽のビジョンが明確にありました。
そして、杉山さんやメンバーに有無を言わせずプロジェクトは進んでいきました。
『オメガトライブ』というプロジェクトで発売された楽曲は、ヒットを記録していきました。
しかし、与えられるだけで制作に携われないメンバーたちの心の中は複雑だったようです。
そして、あまりにも「藤田社長のワンマンぶりに嫌気がさした」というのも解散のひとつの要因だったようです。
それはそうですよね。「やりたいように音楽ができない」というのが、一番つらかったと思うのです。
スタジオミュージシャン採用
一番驚いたのは、レコーディングにスタジオミュージシャンを採用していたということです。
当時も今もスタジオミュージシャンというのは珍しくないかもしれません。
しかしメンバーは、自分たちの演奏でレコーディングすると考えていたと思うので、釈然としない気持ちを抱えたと思います。
amazon の Kindle (電子書籍)でもこの本を購入ました。目次を御覧ください。

一流の音楽家の名前が並んでいます。
この方たちが、オメガトライブのプロジェクトメンバーとして、杉山清貴&オメガトライブを世に席巻させていたのです。
現在、世界的に評価が高まっている松下誠さんもいらっしゃいます。
凄腕ミュージシャンが演奏していたという事実。
ギター:今剛、松原正樹、松下誠、吉川忠英
ベース:富倉安生、高水健二、伊藤広規
キーボード:冨樫春雄、倉田信雄
ドラム:村上“ポンタ”秀一、青山純、林立夫、山木秀夫
パーカッション:浜口茂外也、斎藤ノヴ
ブラス:数原晋、新井英治、ジェイク・H・コンセプション、新田一郎&兼崎順一&包国充
すごいメンバーです。超超一流ミュージシャンです。
オメガのイメージは夜の海
この本の中の一部を抜粋します。康 珍化さんのインタビューから少し編集させていただいています。
サザンオールスターズが昼の海だとしたら、オメガトライブは夜の海。
杉山さんの声は、夏シンガーと言われながらも、太陽の下の明るいハッピーさはないと思う。
シェードとかルーフとか葉陰とか、何かを透かしたあとの透明な光って感じ。
裏話
一番衝撃を受けた箇所です。
康 珍化さんのインタビュー内容です。
君はもう、大人なんだから
答えも出せないまま、抱き合う愛もあるさ
唇が今も君を忘れさせないさ
せめて指先で触れさせてほしい、もう一度だけ
この詩の部分は藤田社長が考えたものだった、一緒に作ったとおっしゃっています。
「ものすごい執念で作品に携わっていた」というエピソードが、たくさん語られています。
夕日をあつめるツイードのジャケット
夕日をあつめるツイードのジャケット、(君のハートはマリンブルー)
この歌詞が、一番好きです。すごくないですか?夕日をあつめる、ただのジャケットではなくてツイードのジャケット。
オシャレですね。情景が浮かんできます。夕日をあつめるというフレーズも素敵。
その夕日をあつめるツイードのジャケットの部分のアンサー的な詩がファースト・フィナーレという曲にありました。
あの時肩にかけたジャケット、涙のしみはもうない
そうだったのですね。今風に言えば伏線回収?知れば知るほど、意味が深いんです。
他にもこの本の中には、当時の業界のウラ側や制作側の苦労話が詳しく描かれています。
是非、ご覧になってください。ファンの方でなくても、当時の音楽業界や、曲の生まれた背景や技術的なことも詳しく書いてあります。これは、暴露本といっても過言ではあありません。私も何度も何度も読み返しています。その度に新しい発見があります。
